公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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fusiform-shaped bacteria

齧歯類、特にマウス、ラットの腸内に常在し、両端が尖った形態をもつ菌群の総称。

当初はtapered rodsと呼ばれ、マウス糞便のダイレクトスメアでは最優勢に存在しているが通常の培養法では発育できないため、細菌であるかどうかも不明であった。1968年にDubosらのグループが特殊な嫌気培養装置(fibreglass glove box)を用いて初めてその培養に成功し、細菌であることが確認された。単にfusiform bacteriaと表現されることもある。

盲腸では優勢に存在し、宿主の大腸上皮の粘液層に生息する。非常に嫌気性の強いExtremely Oxygen Sensitive (EOS) 細菌で、クロロホルム処理に耐性であるが、in vivoでは芽胞を形成するもののin vitroではほとんどの株が芽胞を形成しない。生物・生化学性状試験では反応性の低さと多様性から分類が不可能であり、分子生物学的手法を用いた分類が試みられている。マウスのfusiform-shaped bacteriaでは、16S rRNAの塩基配列の解析が進められており、Clostridium属に含まれる菌株をはじめとして非常に多様な菌種からなる菌群であることが明らかにされつつある。

無菌のマウス、ラットにfusiform-shaped bacteriaを定着させると盲腸サイズが正常化され、またその拮抗作用により腸内菌叢がコントロールされてEscherichia coliPseudomonas aeruginosaClostridium diffcileなどの日和見感染菌の定着が阻止されることが報告されている。これらのことからfusiform-shaped bacteriaは、無菌齧歯類から生理的正常ノトバイオートを作出する際に不可欠な菌群であり、マウス、ラットの腸内フローラの”key”となる菌群であるといえる。

Fusiform-shaped bacteriaは、形態的な分類方法のため種々の菌群が含まれている可能性もあるが、マウス、ラット腸内で腸内フローラのコントロールや宿主の生理に重要な働きをする菌群はClostridiumと考えてよい。

(岩崎晃子)