腸管内にウイルスは存在しますか？

腸管内にウイルスはたくさん存在しています。冬場に感染性胃腸炎の流行を起こすノロウイルス、乳幼児に急性胃腸炎を起こすロタウイルスなどはよく耳にすると思います。小児麻痺の原因となるポリオウイルスも、自然宿主はヒトのみで経口感染し、小腸の粘膜で増殖します。最近では、新型コロナウイルス（SARS-CoV-2）も消化管で感染し増えることが知られています。こうした私たちの細胞に感染するウイルスは、急性消化器症状を起こしますが、獲得免疫が誘導されると腸管から排除されるため、常在しません。
私たちの常在する大多数のウイルスは、私たちの細胞に感染するものではなく、腸内細菌を宿主とするバクテリオファージです。一本鎖DNAウイルスのマイクロウイルス、二本鎖DNAウイルスのカウドウイルス、2014年に初めて発見され、様々な動物の腸管や環境中に存在するcrAssphageとその類縁種などが存在しています。メタゲノム解析の進歩によって腸内ウイルスの存在を捉えられる様になりましたが、今後その種類は研究の発展とともにますます増えていくと考えられています。