乳酸菌の睡眠の質改善作用(ストレス緩和作用)について教えてください
ヒトがストレスを強く感じると、ストレスホルモンの分泌や自律神経系の乱れが生じ、「寝つきが悪い」・「眠りが浅い」といった睡眠の質の悪化が生じます。昨今の研究で、特定の乳酸菌が睡眠の質の改善に有効であることが報告されており、その効果は主にストレスがかかる状況においてストレス反応の緩和とともに見られます。乳酸菌のこれら効果を考察するにあたっては、最初に「脳腸相関」という言葉に表される脳と腸の密接な関係について理解しておく必要があります。脳と腸は神経系、内分泌系、免疫系を介して双方向に情報を伝達しており、互いに密接に影響を及ぼし合っています。腸には膨大な数の微生物が生息しており、その情報が脳に伝達されて、宿主のストレス反応や気分に影響することが分かってきました。乳酸菌の睡眠の質改善作用やストレス緩和作用にはこの脳腸相関が深く関わっており、消化管内に取り込まれた乳酸菌が脳腸相関に間接的または直接的に働きかけた結果として、これらの作用が発揮されたと考えられています。間接的な働きとしては、乳酸菌の摂取によりストレスに伴う腸内細菌叢の乱れが抑えられ、その情報が脳腸相関を介してストレス反応や睡眠の質に好影響を及ぼした可能性があります。また、直接的な働きに関しては、乳酸菌には消化管と脳を結ぶ迷走神経を刺激するものがあり、その刺激が脳に伝達された結果、ストレスに伴う神経活動の変化が抑えられた可能性が考えられます。迷走神経に関しては、その活動を整えることにより精神症状が改善されることが報告されており、メンタルヘルスと密接に関係することが近年明らかにされつつあります。