ヒトの腸内細菌はそれぞれ異なるのでしょうか?
腸内には、小腸から大腸まで、さまざまな腸内細菌が棲息しています。約1,000種類、100~1,000兆個、1~2 kgもの菌が私たちの腸内に生息していると考えられています。腸内細菌は一定のコミュニティーを形成し、それぞれの人には個別の菌叢が存在することが知られています。では、なぜそのようなそれぞれの人に固有の菌叢、すなわち多様性、が生まれるのでしょうか?
その理由には、いろいろなことが考えられますが、長い時間を経ての腸管への細菌の定着と、自然変異による菌株の多様性などが考えられます。つまり、生まれた時には腸内には細菌がまだ存在しないとされますが、免疫力が未熟な時期に外部から微生物が侵人することで定着が始まると考えられています。この時期に家族や身近な生活環境からさまざまな微生物が侵入して定着することになりますので、多様な生活環境により多様性が生まれると考えられます。また、長年、家族で古くから引き継がれている腸内細菌があると考えられますが、長い時間には腸内細菌が自然変異を受けると考えられますので、腸内に定着する菌株にも多様性が生まれることになります。さらに、腸内では腸内細菌が親和性を示すと考えられるムチン層や免疫力などにも違いがあり、腸内の環境は人により異なることも考えられますので、定着における多様性もあると考えられます。