公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

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Bovine milk osteopontin and B. infantis B8762 cooperatively restore gut homeostasis via host-microbe metabolic cross-talk.

npj Science of Food(2026), DOI: 10.1038/s41538-026-01040-x

オステオポンチン(osteopontin: OPN)は、骨や細胞外基質に存在するリン酸化糖タンパク質として同定され、ヒト母乳を含む乳中にも存在する生理活性タンパク質です。OPNは主に骨代謝や石灰化に関する因子として知られていますが、近年では、腸管上皮の成熟、粘液層および上皮バリアの維持、免疫応答の調節にも関与する可能性が示されています。腸管機能や腸内細菌叢が発達する乳児期において、OPNがどのような役割を果たすのかは興味深いテーマです。

本論文は、牛乳由来OPNと、乳児腸内で検出されるビフィズス菌 Bifidobacterium longum subsp. infantis B8762(以下、B. infantis B8762)に着目し、両者の併用が腸管バリア、腸内細菌、代謝物、遺伝子発現に及ぼす影響を統合的に解析しています。まず著者らは、腸上皮細胞特異的OPN欠損マウスを用いた検証により、OPNが腸内細菌叢および腸管バリアの維持に関わる可能性を示しました。さらにOPNの単独投与により、タイトジャンクション、細胞接着・基底膜、免疫、抗酸化に関連する遺伝子発現が亢進し、A. muciniphila、Parabacteroides distasonis、Blautia pseudococcoides を含む菌群の相対的な増加が認められました。これらの結果は、OPNが宿主側のバリア・免疫・抗酸化応答と、腸内細菌叢や代謝物の変化を介して、腸管環境に多面的に作用する可能性を示すものです。一方、B. infantis B8762単独投与では、腸内細菌叢の多様性や組成に加え、トリプトファン代謝および炎症応答に関連する変化が認められました。

特に興味深いのは、OPNと B. infantis B8762を併用した群では、単独投与群よりも広範な変化が認められた点です。併用群では、A. muciniphila や B. longum を含む菌群の増加、E. coli の減少に加え、粘液層関連遺伝子である Muc5b や、抗炎症性サイトカインIL-10をコードする Il10 など、3508の遺伝子発現変化を確認しました。

著者らは、OPNが粘液層や上皮バリアを介して宿主側の腸管環境に働きかけ、B. infantis B8762が短鎖脂肪酸やトリプトファン代謝を含む微生物代謝に関わることで、両者が「宿主―微生物間代謝クロストーク」を通じて腸管恒常性を支える可能性を提案しています。 この研究は、乳由来成分とプロバイオティクスを活用した乳児向け栄養介入を検討するうえでも有用な基礎的知見となることが期待されます。