Hai Ning Shi,W.Allan Walker
Mucosal Immunology Laboratory, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, USA
細菌の定着は消化管免疫系の正常な発達や分化、機能、制御に重要な役割を果たしている。いまだ十分に解明されていない機構により、消化管免疫系は病原体の侵入に対して効果的な免疫能を発揮すると同時にIBDや食物アレルギーのような病的な状況を防ぐための免疫寛容の状態を作り出す。消化管粘膜免疫系の発達や機能における腸内フローラの重要な役割はよく知られている。最近の研究により、プロバイオティクスへの消化管への定着は消化管粘膜免疫系のバランスをとるのに重要な役割を果たしていることが示唆されており、健康な宿主が腸管内の抗原に対して免疫寛容を誘導して維持することに貢献し、宿主が腸管内の抗原に対して異状な反応を起こすことを予防していると考えられている。腸内細菌(内因性、プロバイオティクスを問わず)が消化管粘膜上皮系の発達や維持を制御する細胞学的および分子生物学的なメカニズムや腸内細菌が各種の病的な状況において果たす役割をさらに理解することにより、疾患を予防し治療する新たな戦略を確立することに役立つであろう。
Riitta Puupponenn-Pimia,Anna-Marja Aura,Sirpa Karppinen,Kirsi-Marja Oksman-Caldentey and Kaisa Poutanen
VTT Biotechnology, Finland
腸管は食物の非消化性成分(食物繊維やプレバイオティクス)の発酵の場であると同時に植物油来のフェノール類の変換や吸収の場である。これらの物質は腸内フローラや発酵代謝産物の構成に影響を与えることにより腸内の発酵に重要な役割を持ち、その結果としてヒトに局所的および全身的な影響を与えている。この10年ほど、非消化性の食物成分がプロバイオティクス細菌の活性を高め増殖を促進する可能性について多くの科学者の注目を集めてきた。腸内細菌は食物繊維を変性、発酵して代謝産物、特に短鎖脂肪酸を産生することが知られている。それらの代謝産物はさらに肝臓で代謝されて様々な効果を生体に与える。現在、腸内細菌と生理活性を持つ食物性フェノール類との相互関係に関する知見が急速に蓄積されつつある。フェノール類の吸収と代謝は消化管を通して行われている。上部消化管で吸収や代謝をされなかったフェノール類は結腸に達し、おそらく炭水化物の発酵とともに代謝産物へと変換される。結腸で産生された代謝産物は結腸の上皮に対して効果を及ぼし、その場のフローラにも影響を与えているであろう。代謝産物は吸収されると血中や尿中に検出されるようになり、全身的な保健効果を現すと考えられる。フェノール化合物の保健効果は広く研究されているが、その代謝物に関してはあまり知られていない。フェノール類は強力な抗菌物質であるから、腸内フローラに対して好ましくない効果もあるかもしれない。
Mustafa Shuhaimi1),Abdul M. Ali2),Alitheen Norjihan3),Norihan M. Saleh3),Abdul M. Yazid4)
1)Department of Biochemistry and Microbiology,2)Institute of Bioscience,3)Department of Biotechnology,4)Department of Food Technology,University Putra Malaysia,Malaysia
Bifidobacteriumは表現型も遺伝子的にも多様であるためにその同定は困難な作業である。Bifidobacterium属菌を迅速に分類し、従来の生化学的ならびに形態学的な分類方法を補強する様々なDNAに基づいた手法が報告されてきた。16S rRNA遺伝子や16Sから23Sにかけてのスペーサー領域の遺伝子配列を解読しGenBankに登録された配列と比較するというのが、Bifidobacterium属菌の同定にもっともよく用いられる手法である。LdhやrecA、hsp60といった16S rRNA遺伝子以外の保存された遺伝子配列もBIfidobacteriumを属、種、株といった様々なレベルで分類学的研究をするのに有用な道具であるlehと認識されるようになってきた。また、時間がかかり技術も要する遺伝子配列の解読に代わり、属あるいは種特異的なプライマーやプローブが開発され、迅速なBifidobacterium属菌の同定が可能となった。本総説では、迅速で再現性があり扱いやすい同定法であることから、16S rRNA遺伝子を基にした増幅リホゾームDNA制限酵素解析(ARDRA)についても記述する。さらに、randomly amplified polymorphic DNA(RAPD)、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)、repetitive elements fingerprinting(Rep)といった手法がその汎用性からBifidobacterium属菌の多様性を研究するために広く用いられている。
Rezaei Sabet Mariam1),Keng Wai Yap1),Long Chang Lim1)、Muhammad Kharidah1),Mustafa Shuhaimi2),Sipat Abdullah2),Abdul Manaf Ali3),Abdullah Nur Atiqah4),Abdul Manap Yazid1)
1)Department of Food Technology,2)Department of Biochemistry and Microbiology,3)Institute of Bioscience, University Putra Malaysia,4)Pantai Medical Centre, Jalan Bukit Pantai, Malaysia
28株のビフィズス菌分類株の胆汁中における生存と増殖について検討を行った。28株のうち、25株は2.0%の胆汁に対して耐性を示し、14株は4.0%の胆汁中で12時間後も生存していた。さらに、4.0%の胆汁に対して高度な耐性を示した6株のビフィズス菌分離株について、タウロコール酸(TC)、グリココール酸(GC)、たタウロケノデオキシコール酸(TCDC)、グリコケノデオキシコール酸(GCDC)、タウロデオキシコール酸(TDC)およびグリコデオキシコール酸(GDC)の脱抱合能を検討した。3株のBifidobacterium pseudocatenulatum分離株(D22、F117およびG4)はいずれも脱抱合能を持つことが明らかとなり、78.6~84.6%(TC)、98.6~99.9%(GC)、87.9~97.5%(TCDC)、91.1~100.0%(GCDC)、83.7~87.8%(TDC)ならびに96.5~99.0%(GDC)の胆汁酸を脱抱合することができた。