公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum

Clostridium butyricumは芽胞形成性の偏性嫌気性細菌で、グラム陽性の桿菌である。1880年にPrazmowskiによってブタの腸管から分離され、主要な代謝物として酪酸(butyric acid)を産生することからその名前が付けられた。環境やヒト、動物の腸管に広く分布し、10–20%のヒトの糞便から分離される常在菌の一種である。Clostridium属のType speciesであり、16S rDNA塩基配列に基づく系統分類ではClostridium cluster Iに分類される。
日本、韓国、中国を中心としたアジアでは複数の菌株がプロバイオティクスとして使用されており、日本においては、数種類の株が整腸剤として医薬品の認可を受け長年使用されている。本菌には腸管感染症に対する有効性が多数報告されており、動物モデルを用いた実験では、一部の菌株でClostridium difficile感染症や腸管出血性大腸菌O157:H7感染症に対する予防効果が報告されている。また、臨床研究では、小児の抗菌薬関連下痢症に対する予防効果および治療効果などが報告されている。この他、近年の研究では、Toll-like receptor 2依存的な制御性T細胞の誘導能や炎症時の粘膜におけるIL-10産生性マクロファージの誘導能による腸炎抑制作用なども報告されている。
芽胞の形で経口投与された場合、消化管内で発芽、増殖し、酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生する。短鎖脂肪酸は腸管粘膜細胞の主要なエネルギー源であり、腸管細胞の増殖促進作用や免疫調節作用を有することから、C. butyricumの有効性を説明する主要な因子として考えられているが、一部の菌株ではC. difficileC. perfringensに抗菌活性を示すバクテリオシンの存在も報告されている。
家畜に対する成長促進効果を有することから、日本の畜産分野では以前から複数の菌株が飼料添加物として使用されており、近年では、この内の特定の株が欧州で認可を受け、広く用いられるようになっている。欧州では成長促進目的の抗菌性飼料添加物が禁止されており、その代替としての役割が期待されている。

プロバイオティクスとして用いられている菌株が存在する一方で、病原性を有する菌株の存在も報告されている。1986年にイタリアで報告されて以降、中国、インド、日本、アイルランド、イングランド、米国などにおいて、E型ボツリヌス毒素産生性のC. butyricumによる乳児ボツリヌス症やボツリヌス食中毒が報告されている。また、1977年に報告されて以降、壊死性腸炎(NEC)との関連性が指摘されており、毒素や病原因子の存在が示唆されている。E型ボツリヌス毒素産生株とプロバイオティクス株では遺伝子型が異なり、毒素遺伝子の水平伝播は認められなかったという報告があることから、病原性を示す菌株とプロバイオティクス株ではその性質が大きく異なるものと考えられる。

(岡健太郎、高橋志達)