公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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16S rRNA・16S rDNA

rRNAとは、リボソームを構成するRNAであり、細菌では、その大きさによって23S rRNA、16S rRNA、5S rRNAに分類される。それらをコードするのがrRNA遺伝子 (rDNA) である。rRNAはウィルスを除く全生物に存在し、タンパク質合成に関わる重要な分子であるため、進化速度が比較的遅く、種のレベルにおいて高い相同性を示すことが知られている。また、分子進化中立説に基づいた塩基配列の置換率を用いることで生物の系統をより正確に、かつ、定量的に解析することが可能である。

Wooseら (Proc. Natl. Acad. Sci. 87:4576-4579, 1990) によりsmall subunits rRNA (原核生物では16S rRNA、真核生物では18S rRNA) 遺伝子配列を用いた全生物の系統分類法が提案されたことから、細菌の系統分類には、約1500塩基の16S rDNA配列が用いられている。細菌分類の教科書といえるBergey's Manual of Systematic Bacteriologyも16S rDNAの配列情報を基盤とする分子系統関係を反映させた新版が出版されている。

現在では200万配列以上の16S rDNA配列が決定され、日本DNAデータバンクGenBankEMBLなどの公的な遺伝子バンクに登録されている。また、ミシガン州立大学の微生物センターにより、細菌の分類のためのrDNA配列のデータベースや解析支援アプリケーションがRibosomal Database Projectとして提供されている。

細菌は、基準株とのDNA-DNAハイブリダイゼーションの相同性が70%以上の場合、同種であると定義 (Wayneら、Int. J. Syst. Bacteriol. 37:463-464, 1987) される。しかし、DNA-DNAの相同性と16S rDNA配列の相同性には、相関が見られない(Stackebrandtら、Microbiology Today. 152-155, 2006)こともある。たとえば、16S rDNA配列の相同性がほぼ100%であっても、DNA-DNAハイブリダイゼーションの結果から別種である場合もある。したがって16S rDNA配列を用いた菌種同定のみでは注意が必要であるが、98.7%以上の相同性があれば、同種である可能性が高い。

また、公的データベースへの登録が豊富な16S rDNA配列を比較することで、ある特定の菌種・菌群に特異的な配列が得られる。その配列をPCR (polymerase chain reaction) に用いるprimerやFISH (fluorescent In Situ hybridization) のprobeとして用いることで、そのターゲットとなる菌種・菌群を培養することなく検出・同定することが可能となった。また、16S rDNAを標的としたPCR-DGGE (denaturing gradient gel electrophoresis) 法では、培養不可能もしくは培養困難な細菌でさえも検出可能にし、様々な環境の微生物群集構造が調べられている。さらに、近年、16S rDNAを標的として、次世代シークエンサーを用いた網羅的な16S rDNA解析(メタ16S解析)により、ヒト腸内菌叢などの複雑な微生物群集を、より正確で詳細にしかも短時間で明らかにすることが可能となってきている。

(藤本淳治)