自然免疫系は、生体に侵入した病原体をいち早く感知し、発動する第一線の生体防御機構である。「病原体を感知(認識)する」ことは、自然免疫系を活性化するための必須の要素で、主にマクロファージや樹状細胞などによって行われる。これらの細胞は、パターン認識受容体(pattern-recognition receptor: PRR)を介して微生物の持つ共通した分子構造(pathogen-associated molecular pattern: PAMP)を認識する。PRRは、PAMPを認識すると、細胞内シグナル伝達系を活性化し、病原体排除に必要な生体防御機構を誘導する。また、第二の生体防御機構である獲得免疫系の誘導に樹状細胞が重要な役割を果たしているが、PRRによるシグナル伝達によって樹状細胞の成熟も促進される。
Toll-like receptor(TLR)はPRRとして初めて同定された受容体で、多くのPAMPを認識することが明らかとなっている。TLRは、外部領域、膜貫通領域、細胞質内領域を持つI型膜貫通たん白質である。外部領域に存在するロイシンリッチリピート部分でPAMPを認識し、細胞質内領域のToll-IL-1 receptor(TIR)部分で下流のシグナル伝達系を活性化する。TLRは細胞表面、あるいは細胞内小胞上に発現している。これまでにヒトでは10、マウスでは12のTLRが同定されている。それぞれのTLRはウイルスや細菌、真菌、寄生虫固有のPAMPを認識する(表参照)。TLRはPAMPを認識すると、TIR(前述)にMyD88やTRIFというアダプター分子をリクルートすることによりNF-kBやMAPキナーゼ、IRF-3経路などのシグナル伝達系を活性化し、炎症性サイトカインやI型インターフェロン、ケモカイン、抗菌ペプチドの産生を誘導する。
表 TLRによって認識される微生物成分
Immunity, 34(5) 637–650 (2011)より抜粋
(金 倫基)