公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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異常陰窩巣(aberrant crypt foci:ACF)―大腸癌の前癌病変―

異常陰窩巣(Aberrant crypt foci:ACF)とは、肉眼的には正常に見える大腸粘膜であるが、組織学的には異型を示す腺管が集まって、周囲の腺管とはっきり区別できる病変を形成しているものである。1987年にBirdが、大腸発癌剤(アゾキシメタン)処理したマウス大腸に,メチレンブルーに濃染する微小病変を実体顕微鏡下に観察し,ACFと命名した.そこではACF は (1) 肉眼的には正常に見える,(2) 実体顕微鏡下に観察しうるメチレンブルーに濃染する腺管の集まり,(3) 正常腺管より大きい腺管から成る,と定義されている.ACF は動物における大腸腺腫,さらには癌の前病変と考えられている。ヒトにおいては解析が遅れてきたが、同様に大腸癌の先駆病変としての位置づけが提唱され、この発癌経路はACF-adenoma-carcinoma sequenceと呼ばれている。

腸粘膜は、上皮細胞の増殖とアポトーシスにより常に更新されている。通常は、腺管の底部にある幹細胞が分裂の後上方に分化・移動し、そして最後にアポトーシスにより上皮細胞が脱落するという系がバランスよく保たれているが、ACFではこのバランスが失われている。

ACFが前癌病変と考えられているのは、大腸癌と共通するようなGeneticないしEpigeneticな異常がACFにもみられるためである。例を挙げると、細胞の単一クローン性、染色体不安定性(chromosomal instability)とそれに伴うAPC, p53, SMAD4などの遺伝子の機能喪失、APC, KRASなどの遺伝子の変異、マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability)、CpG island メチル化(methylation)によるMLH1, MGMTなどの遺伝子発現の消失が報告されている。

ヒトにおけるACFの発生のリスク因子としては、年齢、性、大腸癌の家族歴、NSAIDsの使用、タバコが挙げられている。また、腸内細菌の産生する有機酸の変化とACFの発生が関係しているという報告があり、腸内環境と大腸発癌の関係が注目されている。

(三上哲夫)