ノトバイオート(gnotobiote)はgno(=know)とbiota(生物相)を合わせた言葉でgnotobiotaに由来する。動物がいる環境に生存する全ての生物が明らかであるものを指す。無菌動物もノトバイオートの一種との考えがあるが、現在ではノトバイオートは無菌動物に既知の微生物を定着させた動物の意味が一般的である。無菌動物に単独(2種、3種)の菌を定着させたものをmono-( di-, tri- ) associated animalsと表現する。Ex-germfreeとは言葉通り元無菌動物の意味で無菌動物を通常化したものを言う。これは一定期間無菌状態で維持されることになるが、その期間についての定義はない。Defined (limited) flora 動物は単に無菌動物に通常動物の糞便を投与したものではなく、例えば加熱処理した糞便(芽胞のみ生残)を投与するなどある種の限られた菌群が投与されたものを指す。無菌動物を通常化する場合、動物の生理状態を中心に表現する場合”normalization, normalixe”、動物の環境を中心に表現する場合”conventionalization, conventionalize”と使い分けるが、現在は前者を用いることが多い。異種動物のフローラ(糞便)を無菌動物に投与した場合、動物の正常化とは言えず、”human-flora associated animal” と表現するのが適当である。
無菌動物は帝王切開や子宮切除により無菌的に得られた胎児をアイソレーターに移動し蘇生させた後、同種動物に里子に出すか、人口哺乳で飼育する。検出されうる全ての微生物、寄生虫がいない動物を言う。ここで言う微生物には定義的にはウイルス、リケッチアは含まれていないが、上記作出方法で得られたものには通常検査で検出されるウイルスは検出されない。
どのような方法で無菌であることを認定するかは難しい問題であるが、現在広く用いられているのは、ハートインヒュージョンブロス、チオグリコレートブロス、ポテトデキストロースブロス、クックドミートブロスに糞便、床敷き、給水、アイソレーター内部のふき取りを摂取し、糞便のダイレクトスメアのグラム染色で汚染を確認する。これは全ての菌を確認するというよりは、アイソレーターの損傷やオートクレーブ滅菌の不備などで汚染することが多く、この場合、ほとんどで芽胞菌、ブドウ球菌、大腸菌、カビ類による。これらの菌を検出するには上記方法で十分と考える。
無菌動物は通常動物に比べて明らかに生理的に異常状態で同じ動物とは考えにくい。単に通常動物から菌を取り除いた動物ではない。抗生物質により無菌状態を作ることは可能だが、無菌動物と元通常動物では動物の各器官での機能は異なる。無菌動物・ノトバイオート動物を用いる実験ではこの点を理解したうえで使用することが求められる。
(伊藤喜久治)