メタボロミクスとは、生命活動によって生じる代謝物を網羅的に解析することで生命現象を明らかにしようとする研究分野である。ゲノム配列を解析するゲノミクスやタンパク質を解析するプロテオミクスなどと同様に、メタボロミクスによって生命現象を読み解くための有力な情報が得られる。腸内細菌に由来する代謝物の一斉解析にも用いられる。
生体内には核酸やタンパク質のような高分子以外にも、アミン、アミノ酸、有機酸、脂肪酸、糖など多様な低分子代謝物が存在している。これらの生体内の代謝物全体をメタボロームと総称する。メタボロミクスでは試料中に含まれる代謝物レベルを一斉かつ網羅的に測定するが、物性の異なる代謝物を単一機器で完全に網羅する解析する手段は存在しないため、解析対象の物性に合わせて核磁気共鳴(NMR)装置、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析計(CE-MS)などが使用される。このうち、NMRは溶媒を変えることで、幅広い化合物を検出可能であるが、検出感度はあまり高くない。GC-MSは揮発性の低分子有機酸や芳香族化合物の一斉解析に用いられ、LC-MSは脂肪酸、リン脂質など幅広い化合物の解析が可能である。またCE-MSはイオン性代謝物質を高感度に検出できる。
ヒト生体試料の大規模なメタボロミクスとして、4630人の尿サンプルを解析し生活習慣病との関連を調べたINTERMAPプロジェクトや、human metabolite data base(HMDB)が知られている。
(長谷耕二)