公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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菌交代症(microbial substitution disease)

ヒトの体内には病原性を有する細菌も生息しているが、健常人において常在細菌叢を形成する細菌の働きにより、通常は病原性を有する細菌の増殖が抑制されている。しかし、抗菌薬が投与されると、体内に生息する常在細菌叢を形成する細菌の多くが死滅して、菌叢に大きな変化が生じる。その結果、これまで病原菌の増殖抑制に働いていた菌叢が失われ、病原菌が抗菌薬耐性菌である場合、その影響で病原菌が体内で異常に増殖する現象が生じる。このように抗菌薬の影響を受けてある種の細菌が異常に増殖する現象を菌交代現象 (microbial substitution)といい、菌交代現象の結果としてもたらされる疾患を総称して菌交代現象と呼んでいる。
代表的な菌交代症としてクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症(Clostridium difficile associated diarrhea: CDAD)がある。C. difficleはグラム陽性の芽胞を形成する偏性嫌気性菌である。C. difficleの芽胞を経口的に摂取すると、芽胞は耐酸性を示すことから、胃を通過する。その後、C. difficleの芽胞は胆汁酸に暴露されると栄養型となって大腸で増殖する。芽胞を形成したC. difficileは、抗菌薬や消毒剤、熱などに抵抗して環境中や体内で長時間生息する。2005年、強毒性のC. difficleC. difficile BI/NAP1/027と呼ばれている)による大規模なアウトブレイクがカナダで発生し、その後世界中に拡散した。本邦では、この強毒株によるCDADの報告は少ない。
CDADのリスク因子として、フルオロキノロン系薬、βラクタム系薬、クリンダマイシンなどの抗菌薬や胃酸分泌抑制薬の投与、長期入院が挙げられている。CDADの予防には抗菌薬の適正使用と感染制御が重要である。一方でプロバイオティクスの投与や再発を繰り返す症例に対して欧米では糞便移植なども試みられている。

(石井良和)