公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


PAGE
TOP

自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)

自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)は、リンパ球類似の形態をもち、Tリンパ球と同様のサイトカインを産生する、抗原受容体をもたない細胞として見出された。
CD4+ ヘルパー Tリンパ球は産生するサイトカインのパターンによって 3つのサブセットに分類されるが、ILCも同様に、T-bet依存的に分化し、IFN-γを産生する ILC1、GATA-3依存的に分化し、IL-5、IL-9および IL-13を産生する ILC2、および RORγt を発現し、IL-22あるいは IL-17を産生する ILC3の3つのサブセットに分類される。分化に必要な転写因子と産生するサイトカインから、ILC1 が Th1 に、ILC2が TH2に、ILC3がTH17に対応し、機能的にも CD4+ ヘルパーT リンパ球の 3サブセットに類似すると考えられている。主に肺や腸の粘膜組織に分布する。
一方、血中やリンパ組織に存在する natural killer(NK)細胞も ILC のサブセットの一つと考えられ、ウイルスや細菌が感染した細胞を標的に、CD8+ 細胞障害性T リンパ球と同様の細胞障害活性を示す。
ILCはTリンパ球、Bリンパ球と同様に、リンパ球系共通前駆細胞から分化する。感染性微生物に対する初期生体防御反応に重要な役割を演じ、引き続いて誘導される獲得免疫の性質にも影響を及ぼすと考えられる。

参考文献:
Abbas AK, Lichtman AH, Pillai S, Cellular and Molecular Immunology, 9th Edition, Chapter 4, Innate Immunity, Elsevier 2018.

(稲垣直樹)