公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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獲得免疫(acquired immunity)

麻疹(はしか)は一度罹ると、二度と罹らないと言われる。またワクチンを接種しておくと、本当の病原体に感染した際に症状が軽くてすむ。この際に主力として働くのが獲得免疫である。獲得免疫は高い選択性を持って異物を認識し、さらにその特徴を記憶するため、例えば、麻疹に対する獲得免疫はインフルエンザにはほとんど効果がない。このように「特異性」と「記憶」が獲得免疫の特徴となる。
獲得免疫において働く主な免疫細胞は、抗原提示細胞とT細胞、B細胞である。樹状細胞に代表される抗原提示細胞は、補足した異物を細胞内で分解することで生じるペプチド断片をMHC分子とともに細胞表面に提示する。T細胞は、この樹状細胞の表面に提示されたペプチドとMHC分子の複合体を認識することで、異物に関する情報を獲得し、ヘルパーT細胞やキラーT細胞に分化する。ヘルパーT細胞はB細胞を教育し、抗体を産生する形質細胞へと成長さる。またキラーT細胞も、ヘルパーT細胞の助けを借りて、病原体に感染した細胞などを排除する能力を獲得する。
このような過程で生じた「抗体」と「キラーT細胞」が、獲得免疫における主要な実効因子として機能する。抗体は病原体に結合することで、①細胞への結合や侵入を防ぐ、②単独もしくは補体とともに働くことで、病原体を殺傷する、③免疫細胞が病原体を認識し、殺傷するのを助ける、といった働きをするとともに、病原体によって作られた毒素など有害物質にも結合し不活性化することもできる。一方、T細胞は病原体や毒素などを直接認識することはなく、抗原提示細胞に提示された同じペプチド断片とMHC分子との複合体を持つ病原体に感染した細胞や病態細胞を認識し、細胞を丸ごと殺傷する。
獲得免疫においては、抗原提示細胞による異物の取り込みを起点に、その後、T細胞やB細胞の教育、成長の時間が必要なため、成立するのに5~7日程度は必要と言われている。一方、獲得免疫の細胞は記憶能力を持っているため、一度教育をうけて異物の情報を収集すると、次に同じ異物に出会った時には迅速かつ協力に反応することが可能である。

(國澤 純)