DNAシークエンサーはDNAの塩基配列を決定する装置である。その最初の原理であるサンガー法に対して、”次世代”という言葉が用いられるようになったが、そのサンガー法を自動化しキャピラリー電気泳動で読む方法は第1世代シークエンサーとよばれた。その後、第2世代、第3世代として世に紹介され、それぞれの中にいくつかの装置のタイプがある。すなわち、”次世代シークエンサー”という言葉は、第2世代以降をまとめて使われている言葉である。
第1世代のシークエンサー(代表機種:ABI3730)が1日に塩基配列決定できるのは98万塩基であった。次世代の最初の第2世代シークエンサーは2005年、アメリカのバイオベンチャーの454ライフサイエンシズ社から発売された代表機種の”454”では1日に塩基配列決定できるDNAの塩基配列は約5,000万塩基となった。またThermo Fisher Scientific社の発売したシークエンサーの“Ion Torrent”は、”454”とほぼ同じ手法ではあるが1ランで10~20億塩基配列を決定でき、コストは格段にさがった。Illumina社の”MiSeq”や”HiSeq”はペアエンドのシステムで500~600塩基長の塩基配列を決定でき塩基配列の読み間違いはほとんどない原理が採用された。当時のコスト計算で”MiSeq”はキャピラリー電気泳動を使ったサンガーシーケンス法と比較して約250分の1以下にコストダウンできたことで個別菌のゲノム解析や網羅的な細菌叢解析の研究に大きく貢献した実績がある。
その後、”PacBio Sequel”はDNAの片方の鎖から連続した8万塩基以上の塩基配列を読み取ることのできるシークエンサーで、一分子シークエンサーもしくは第3世代シークエンサーと呼ばれている。第3世代として、最長230~300 kbのリード長で1ランあたり20 Gb程度のデータが取得できるOxford社のNanopore technology、Illumina社の”TruSeq Synthetic Long-Read DNA Library Prep kit”および10XGenomics社のライブラリ作成など多様な技術が応用されている。実際にはそれぞれのシークエンサーの長所と欠点を補うようなかたちで研究には用いられるようになっている。
(森田英利)