公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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パネート細胞(paneth cell)

パネート細胞(パネト細胞、Paneth cell)は小腸上皮の最終分化細胞の一系統で、小腸陰窩の基底部に位置し、小腸上皮幹細胞(Crypt base columnar stem cell)と隣接している。パネート細胞の細胞内顆粒中には抗菌ペプチドであるαディフェンシンを豊富に含み、他にもRegIIIγ、angiogeninや抗菌タンパク質であるリゾチームなどの殺菌作用を有する物質を有する。十二指腸、空腸に比べて回腸の陰窩でパネート細胞数がより多く、また、回腸側ほど細胞内顆粒中にαディフェンシンが多く発現している。パネート細胞は、細菌抗原、代謝物や菌体の刺激、コリン作動性神経刺激および特定の食成分刺激などに応答して顆粒を腸管内腔にすばやく分泌することで、主にαディフェンシンの殺微生物作用によって病原体を排除する。哺乳類のαディフェンシンは、32~36個のアミノ酸からなる塩基性ペプチドであり、分子内に3個のジスルフィド結合を有する。パネート細胞αディフェンシンには、ヒトでは2種類 (HD5とHD6)、マウスは6種類(Cryptdin1~Cryptdin6)以上のアイソフォームが知られている。分泌されたαディフェンシンは、病原菌を強く殺菌する一方で、Lactobacillus casei, Bifidobacterium breve, Bacteroides fragilisをはじめとする宿主に有益な共生菌にはほとんど殺菌活性を示さない選択的な殺菌活性により、腸内細菌叢組成を制御していることが報告されている。すなわち、パネート細胞αディフェンシンは腸内細菌の組成を適切に制御することによって腸内環境の恒常性を保っていると考えられている。
パネート細胞はWntシグナルとNotchシグナルによる制御を受けており、Wntシグナルの活性化でEphBが発現して陰窩基底部に位置すること、また、WntやEGFなどを幹細胞に供給することで幹細胞ニッシェを形成して小腸上皮細胞の再生・分化を制御することが知られている。
疾患との関係性については、パネート細胞におけるNOD2、XBP1、ATG16L1などクローン病感受性や病態形成に関わる分子発現およびαディフェンシンの量と質の異常が報告されており、小胞体ストレス応答の異常やオートファジー異常が示されている。クローン病モデルマウスで、パネート細胞において正常な酸化型αディフェンシンとは異なる、ジスルフィド結合を持たない還元型αディフェンシンの産生・分泌が腸内細菌叢の破綻(dysbiosis)を引き起こすことが示された。また、パネート細胞からのαディフェンシン分泌量低下は、dysbiosisを引き起こすことで、感染症や炎症性腸疾患をはじめとして肥満症、移植片対宿主病、うつ病などの病態に関与することが示されている。腸管粘膜免疫において自然免疫を担当するパネート細胞がαディフェンシンを介して、病原体の排除と腸内細菌との共生の両方に関与していることが分かってきた。

(綾部時芳)