T細胞はヘルパーT細胞(CD4+CD8-)と細胞障害性T細胞(CD4-CD8+)に大別され、ヘルパーT細胞にはさらに様々なサブセットが存在する。
腸管における存在量の多いTh17細胞は、サイトカインの1種IL-17産生を特徴とするヘルパーT細胞であり、IL-6/IL-1β/IL-23に誘導される病原性Th17細胞とTGF-β1/IL-6に誘導される非病原性Th17細胞に分けられる。このうち病原性Th17細胞は、高い炎症誘導能を有し、炎症性疾患や自己免疫疾患の病因となっている。
一方、非病原性Th17細胞は定常的に腸管内に存在し、その分化誘導には腸内細菌の関与が知られている。Germ freeマウスを用いた検討では、腸内細菌であるセグメント細菌(segmented filamentous bacteria :SFB)が樹状細胞のサイトカイン産生を促進し、Th17細胞分化を誘導することが報告されている。誘導された非病原性Th17細胞はRAR-related orphan receptor (ROR)γアイソフォームであるRORγt 、IL-17A 及び IL-22などの炎症性サイトカインを産生し、病原細菌の感染防御や上皮バリア機能を維持している。
Th17細胞の特徴として、他のヘルパーT細胞と同様に特定のサイトカインの再刺激など微小環境の変化により形質転換する可塑性を有することが挙げられる。腸管内のパイエル板において、Th17細胞は濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh細胞)に分化転化し機能することが複数の研究グループにより証明されている。
Tfh細胞はC-X-C chemokine receptor type 5(CXCR5), B cell lymphoma 6 (Bcl-6), 及びProgrammed cell death 1(PD-1)を発現する、二次リンパ組織の瀘胞胚中心に局在するヘルパーT細胞である。パイエル板において、Tfh細胞はInducible costimulator (ICOS)やPD-1により活性化され、IL-21を産生してB細胞の分化・増殖を誘導する。また、CD40Lを発現し、CD40を介してB細胞のクラススイッチおよび高親和性IgA産生を誘導するなど胚中心反応を制御している。この高親和性IgAは病原性細菌に対する防御のみならず腸管細菌叢を制御し、腸管の恒常性維持に働く。Tfh細胞もまたSFBにより分化・増殖を誘導され、IgA産生が促進されることが報告されている。一方、増殖したTfh細胞が血中に移行し、他のリンパ組織内のB細胞と協調して自己抗体産生に関わる可能性も示唆されている。自己免疫疾患と腸内環境に関連する報告は年々増えており、今後プロバイオティクス等を用いた自己免疫疾患の制御が期待される。
(中川久子)