フラクトオリゴ糖は、難消化性オリゴ糖の一種で、スクロース(GF)に1~3 分子のフラクトースが結合した3~5 糖のオリゴ糖である。GFに1分子のフラクトースが結合した 1-ケストース(GF2)、6-ケストース(GF2)、ネオケストース(FGF)、さらに、フルクトースが結合したニストース(GF3)や1F-β-フラクトフラノシルニストース(GF4)が知られている。天然界ではタマネギ、チコリ、バナナ、ゴボウなどに含まれている(1)。工業的には、フラクトオリゴ糖(素材)は、スクロースを原料に微生物由来のフラクトース転移酵素により製造され、食品原料として使用されている。その味質はショ糖に近く、甘味度はショ糖を100としたとき30ほどである。虫歯になりにくい糖質であり、1グラム当たりのエネルギー量も2キロカロリーである。ただし、難消化性の糖質のため、一度に多量に摂取すると一時的な下痢が誘発される可能性がある。よって、フラクトオリゴ糖の最大無作用量は、体重一キログラム当たり成人男性で0.3 g、成人女性で0.4 gと報告されている。
フラクトオリゴ糖を1日1 g以上摂取すると、胃酸やヒト小腸内酵素により分解および消化されることなく大腸に到達し(難消化性)、乳酸菌やビフィズス菌など善玉菌の餌になり、腸内フローラを改善、3~5 gを摂取すると便通を改善することが報告されている。小腸酵素で分解されないため、摂取しても血糖値および血中インスリンの上昇が認められない。その上、小腸酵素で分解されずに大腸に到達したフラクトオリゴ糖は、腸内細菌により発酵され、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する。産生された短鎖脂肪酸により、大腸内のpHが低下し、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの溶解性が上昇し、吸収が促進されることも報告されている。
このように様々な機能を持つフラクトオリゴ糖は、1993年には、「おなかの調子を整える」という整腸機能を訴求した特定保健用食品として発売され、2005年には規格基準型トクホ素材として認められている。さらに2000年には、ミネラル吸収促進についても特定保健用食品として表示が許可された。そのほか、長年、乳児用調製粉乳にも利用されており、人工栄養児の便性が母乳栄養児の物に近づく効果があることが疫学調査で明らかになっている(2)。
参考文献:
(1) Spiegel J, Rose RM, Karabell P. et al. Food Technology, 1994; 48: 85-89.
(2) Jinno S, Yamazaki K, Nakamura Y. et al. Biosci Biotech Biochem, 2020; 84: 633–639.
(夏目みどり)