公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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腸管オルガノイド(intestinal organoid)

オルガノイドとは、複数の細胞が相互作用し、秩序だって自己組織化した三次元立体構造をもった細胞塊(集合体)のことである。この形成された細胞集合体は、組織の形態学的、機能的な特徴を有していることから、オルガノイドは「ミニ臓器」とも呼ばれている。腸管オルガノイドの場合、小腸陰窩底部に存在する腸管上皮幹細胞や、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)から胚体内胚葉に分化させた細胞を細胞外基質が豊富に含まれるハイドロゲルに包埋し、適切な成長因子、低分子化合物を含む培地で培養すると、腸管陰窩や絨毛構造を示す三次元構造体(腸管オルガノイド)を形成する。この腸管オルガノイドには、幹細胞、パネート細胞、吸収上皮細胞、腸管内分泌細胞、杯細胞など、成体腸管上皮を構成する全ての種類の細胞が存在する。そのため、栄養素や薬品の吸収試験、腸内細菌やその代謝産物が宿主上皮に与える影響など、様々な腸管内でみられる生理機能をin vitroで検証することが可能である。現在ではこの培養方法を利用することで、小腸のみならず、大腸、胃、膵臓、肝臓、肺、腎臓、前立腺、または脳や血管など数多くの臓器に関するオルガノイドを作製することが可能である。また、これらの臓器はマウスに限定されておらず、ヒトやブタなど様々な動物種からもオルガノイドを作製できることが報告されているため、発生学、医学のみならず、薬理学、農学、畜産学または微生物学など幅広い研究分野で応用されている。
ただし現状のオルガノイドという用語は、上述したように成体組織から採取した組織幹細胞を利用して樹立した場合と、ES/iPS細胞から分化・誘導させて作製した場合の両方を区別しないで使用されている。これらの2種類のオルガノイドは、互いに似て非となる特徴を持っているので、目的によって使い分ける必要がある。

(佐々木伸雄)