公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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リーキーガット(leaky gut)

リーキーガットとは、腸管壁のバリア機能が低下し、本来吸収されるべきではない未消化の食物成分や 有害物質、細菌などが腸管内から血液中に漏れ出す状態を指す。医学的には「腸管上皮の透過性亢進(intestinal hyperpermeability)」とも呼ばれる。この状態は、腸内環境の乱れや腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが崩れること、過剰なストレス、食生活の偏り、薬剤(抗生物質や非ステロイド性抗炎症薬など)の長期使用、アルコールの過剰摂取などが要因となると考えられている。

リーキーガットが進行すると、慢性炎症や自己免疫疾患、アレルギー、肌荒れ、精神的な不調(うつ症状や不安感)など、さまざまな健康問題の一因となる可能性が指摘されている。さらに、腸管の透過性亢進が全身の免疫応答を過剰に刺激し、炎症性疾患や代謝性疾患(例えば糖尿病や肥満)の発症リスクを高める可能性も示されて いる。ただし、リーキーガットという概念は現在も研究段階であり、その診断基準や治療法については統一的な見解が得られていない。保険適用されていないが、唯一の検査がラクツロース・マンニトールテストである。

腸内環境を整えることが、リーキーガットの予防や改善につながると考えられている。具体的には、発酵食品(ヨーグルト、味噌、納豆など)や食物繊維の積極的な摂取、ストレス管理、適度な運動、バランスの取れた食生活を心掛けることが提案されて いる。また、プロバイオティクスやプレバイオティクスの摂取が腸内フローラの改善に役立つ可能性がある。これらの取り組みを通じて腸管バリア機能を強化することが期待されている。

さらに、腸内フローラの構成を詳細に調べる腸内細菌検査が、個々の腸内環境に応じたアプローチを可能にする場合がある。例えば、特定の腸内細菌の過剰や不足がリーキーガットと関連している可能性があるため、それに応じた食事やサプリメントの選択が治療や予防に役立つと考えられる。

近年、腸内細菌学や腸管バリア機能に関する研究が進展しつつあり、リーキーガットのメカニズムや治療法に関する新しい知見が得られることが期待されている。腸管の健康を保つことは、全身の健康や生活の質を向上させる重要な要素であり、引き続き注目される分野である。

(結束貴臣)

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