公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)

薬剤耐性(AMR)は、感染症の原因となる微生物が従来有効であった抗微生物薬に対する感受性を失い、その治療効果が減弱する現象を指す。AMR は自然界における微生物の進化過程でも生じるが、不適切な抗菌薬使用、感染対策の不備、農畜産業における過剰・不適切な薬剤使用などがAMRを加速させる。AMR が進行すると、日常診療の安全性が損なわれ、治療選択肢の減少、感染症の重症化、死亡率の上昇、さらには医療費増大につながる。そのため、ヒト医療のみならず、動物・環境分野を包括する One Health アプローチに基づいた対策が求められる。

耐性菌による感染症に対して、どの程度治療可能性が残存するかを示す概念として、MDR(多剤耐性)、XDR(超多剤耐性)、PDR(汎耐性)が用いられている。また近年、実臨床で治療が極めて困難な状況を捉える指標として DTR(治療困難耐性)という概念が注目されている(表1)。

表1 AMRに関連した用語の差異

略号 正式名称 定義(要点) 治療選択肢の現状
MDR Multidrug Resistant(多剤耐性) 一般に3クラス以上の抗菌薬に耐性 複数クラス残存
XDR Extensively Drug Resistant(超多剤耐性) ほぼすべての抗菌薬クラスに耐性 限定的(1〜2クラスのみ残存)
PDR Pan-Drug Resistant(汎耐性) 既知のすべての抗菌薬に耐性 なし
DTR Difficult-to-Treat Resistance(治療困難耐性) カルバペネムを含む主要抗菌薬(βラクタム系薬およびフルオロキノロン系薬)に耐性 コリスチン等の毒性の高い薬剤が残存

参考文献

WHO: Global antimicrobial resistance and use surveillance system (GLASS) report 2022.
World Health Organization; https://www.who.int/publications/i/item/9789240108127.

IDSA Guidance: Infectious Diseases Society of America Guidance on the Treatment of Antimicrobial Resistant Gram-Negative Infections. Clin Infect Dis. 2022; 75: 1878–1884.

(石井良和)