公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

研究トピックスと過去のお知らせ


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上野川理事長のIDF Award受賞のご紹介

常務理事・総務局長 檀原宏文

当財団理事長の上野川修一先生が此の度酪農乳業界で最高位のIDF Award(International Dairy Federation Award 、IDF賞)を受賞されましたことは財団にとりましても真に喜ばしいことであります。お祝いを申し上げますと共に会員の皆様方にもお知らせします。
本年10月18日から中国・上海で開催された国際酪農連盟主催の世界酪農会議年次総会第2日目(19日)の授賞式で先生にIDF賞が授与されました。1998年に創設された本賞をアジア人で受賞したのは上野川先生が初めてであります。
先生はミルクアレルギーの問題から腸管免疫という難解な課題の研究に進まれ、食物アレルギーが起こるメカニズムの究明とその予防あるいはリスクの軽減化に貢献されました。この領域では先駆的な研究者の一人であります。さらに、乳酸菌、ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に及ぼす有益な効果を生体の免疫応答の面から明らかにされました。世界的に関心が高まっているプロバイオティクスの開発・臨床応用の研究においては今やそれは中心的な研究課題の一つとなっています。また、それらの研究を通して先生から指導を受けた我が国及びアジア諸国の多くの研究者達が関係領域の要職にあって活躍されていることから、人材の育成という点でも先生は食品業界の発展に大きく貢献されています。これらのことが評価されて先生はこの度国際的に権威のあるIDF賞を受賞されました。
ヨーグルトを飲用するブルガリアに健康な長寿者が多く、健康の維持には腸内の腐敗を抑える腸内細菌叢の構成が重要であると述べた100年前のメチニコフによる著書の訳本「長寿の科学的研究」復刊の序文において、上野川先生ご自身は30代の中頃から免疫に関心を持ちはじめ、免疫学者で食細胞の研究が評価されてノーベル賞を受賞したメチニコフに知らぬ間に憑かれ、その掌のなかで蠢いていただけではないかと恥ずかしい思いもするとご自分の研究活動を振り返って述べておられます。率直なご感想ともいえましょうが、350編に及ぶ研究論文を発表され、それらの中でメチニコフが提起した「健康長寿」という万人が望む大きな課題を腸管免疫と生体防御機能の向上という観点から解きほぐす一つの道筋をつけられた先生のご功績は大いに評価されるに値するものであります。参考までに先生がご執筆の数多くの著書から関係の一部を紹介してこのお知らせの締めくくりとします。

食品とからだ 免疫・アレルギーのしくみ」朝倉書店(2003年2月発行)
「免疫と腸内細菌」平凡社新書(2003年9月発行)
「賢い食べ物は免疫力を上げる」講談社新書(2004年9月発行)

  • 上野川修一 写真1
  • 上野川修一 写真2
  • 上野川修一 写真3
  • 上野川修一
  • 【ご略歴】
    1942年東京都生まれ。
    東京大学農学系大学院農芸化学専攻修了。東京大学大学院農学生命科学研究科教授を経て、日本大学生物資源科学部教授、東京大学名誉教授。2000年度、日本農芸化学会賞。研究分野は食品免疫学、食品機能学など。