上野川修一理事長が食品免疫学研究におけるご功績により平成20年度秋の紫綬褒章をご受章されましたので会員の皆様にお知らせいたします。
(公財)日本ビフィズス菌センター
上野川修一先生の紫綬褒章ご受章をこころよりお慶び申し上げます。
今回、「食品免疫学研究」におけるご功績によるご受章とのことで門下生といたしまして大変うれしく思います。上野川先生は、食品成分が栄養素のはたらきだけでなく生理調節機能を有するという機能性食品の概念を発信した研究者のお一人でおられますが、特に食品が免疫系を調節しうることを、自らのご研究でお示しになり、またその概念を国内外に広められました。まさに、食品科学と免疫学の境界領域を「食品免疫学」の学問体系として確立されたのであります。
今でこそ、食品に免疫系調節作用があることが当然のことに思えますが、20年以上前となりますと状況は全く違います。当時ほとんど未解明だった腸管免疫系に、異物でもある食品に対応する、重要かつ独特の作用があることを、いち早く見出されておられたのです。上野川先生の展開された食品免疫学研究は、この腸管免疫系の機構解明の基礎的研究に基づくものとなっています。食品由来アレルゲンタンパク質の構造とリンパ球による認識、食品タンパク質摂取による免疫抑制機構(経口免疫寛容)などについて多くの新知見を明らかにされ、現在も腸管免疫系の先導的研究を続けられています。一方で、乳酸菌、ビフィズス菌の免疫調節作用についても当時から注目されていて、腸内細菌学会でも発表があります数々のプロバイオティクスの免疫機能研究の源流となっています。現在、基礎免疫学分野においても、腸内細菌と腸管免疫系はホットトピックとなっており、時代が先生のお考えに追いついてきた、と言えるように思います。また、言うまでもなく、先生は基礎研究の発展のみならず、当日本ビフィズス菌センターや農芸化学会の活動などを通じ、基礎研究と応用研究の融合的発展、免疫機能食品の開発における産学官の連携推進にご尽力、ご貢献されてこられました。
上野川先生は常々、「他人のやっていないことを研究する」、とおっしゃっておられますが、この独創的研究は、食品学、医学、微生物学の関連分野の研究者を刺激し、また若い世代をひきつけてきました。この魅力溢れる研究分野を創っていただき、本当に感謝申し上げます。ちょうど、関係の研究者が結集して設立された日本食品免疫学会も5周年を迎えようとしています。私ども後進は、先生とともにこの世界的に見てもユニークな研究分野をさらに発展させるべく、微力ながらお役に立てればと考えております。
今後も、ますますお元気で、私どもをさらにご指導いただきますよう、上野川先生にお願いをさせていただき、お祝いのことばとさせていただきたいと存じます。
2009年2月
八村敏志
東京大学大学院農学生命科学研究科
食の安全研究センター