公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

用語集


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ラクトトリペプチド(lactotripeptides)

ラクトトリペプチドはバイオジェニックスの一つでLactobacillus helveticus発酵乳の中から、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害活性を有するペプチドとして分離・同定された2種の乳由来トリペプチド(Val-Pro-Pro, Ile-Pro-Pro)の総称である。両ペプチドのin vitroのACE阻害活性は50%阻害濃度(IC50)としてVal-Pro-Pro: 9μM, Ile-Pro-Pro: 5μMである1) 。

乳内の主要乳蛋白質であるカゼインにはVal-Pro-ProとIle-Pro-Proのアミノ酸配列が含まれており、乳酸菌の発酵過程で乳酸菌特有のプロテアーゼ群によりラクトトリペプチドは加工・生産されると考えられている。特に、L. helveticusには両ペプチドの生産に関与する特徴的プロテアーゼ群が存在し、ACE阻害ペプチドが効率良く生産される2) 。

ACEは前駆ペプチドであるアンジオテンシンIから強力な血圧上昇作用をもつアンジオテンシンⅡに変換する活性を有し、血圧の上昇に影響を与える。同ペプチドを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与した場合、大動脈からペプチドが検出され、大動脈中のACE活性が低下することから、経口摂取したラクトトリペプチドは腸管で吸収され、血管内のACE活性を阻害することで血圧を低下すると考えられている。

SHRにラクトトリペプチドを経口投与した場合、有意な血圧低下がみられることに加えて、ヒト試験においても、血圧高値者にラクトトリペプチドを含む発酵乳やペプチドを数週間以上投与することにより、血圧値が有意に低下することが多くの試験において確認されている。

高血圧症は生活習慣病の一つとして大きな社会的問題となっており、ラクトトリペプチドのような機能性成分を利用した血圧のコントロールに期待が持たれている。また、近年、ラクトトリペプチドは血圧の調節だけではなく、高血圧に起因する循環器病の予防にも有用であることが示唆されている。

参考図書
1) Nakamura et al. Purification and characterization of angiotensin I-converting enzyme inhibitors from sour milk. J Dairy Sci 1995; 78:777-783.
2) Yamamoto et al. Antihypertensive effects of different kinds of fermented milk in spontaneously hypertensive rats. Biosci Biotech Biochem 1994; 58:776-778.

(中村哲平)