ガラクトオリゴ糖は、小腸で消化吸収されにくい性質を持つオリゴ糖の一種であり、大腸に到達してビフィズス菌の増殖を促進する、いわゆる「プレバイオティクス」の代表例の一つである。
1. 化学構造
ガラクトオリゴ糖の構造は、グルコースを末端とし、複数のガラクトースが伸長した2糖から6糖、最大8糖までの異性体の混合物である。工業的には乳糖に微生物由来のβ-ガラクトシダーゼを作用させて生産される(「プレバイオティクス」)。主成分は、乳糖の非還元末端のガラクトースに一分子のガラクトースが結合したガラクトシルラクトース(GL)である。GLは、牛乳やヒト母乳に含まれる他、ヨーグルト等の発酵乳中にも存在することが知られている。GLの構造は、ガラクトースが乳糖にβ-(1→3)結合した3’-GL、β-(1→4)結合した4’-GL、もしくはβ-(1→6)結合した6’-GLが知られており、どれが主成分となるかは、反応に用いるβ-ガラクトシダーゼの種類や反応条件によって異なる。
2. 腸内細菌による利用
母乳栄養児では出生直後からビフィズス菌優勢の腸内細菌叢が形成されるが、それにはヒト母乳中のミルクオリゴ糖(HMO)が重要な役割を果たしていると考えられている。ガラクトオリゴ糖は乳児および成人において腸内のビフィズス菌の増加を促進することから、HMOの代替オリゴ糖として、育児用粉乳に応用されてきた。ヒト腸内から見出されるビフィズス菌の多くは、高いβ-ガラクトシダーゼ活性を示すこと、ならびに複数のβ-ガラクトシダーゼを保有することが知られている。これらの性質は、ビフィズス菌が多様な構造から成るガラクトオリゴ糖に対して広い基質利用性を示し、他の腸内細菌と比して優先的に利用できる理由であると考えられている。なお、ビフィズス菌株によるガラクトオリゴ糖の詳細な代謝経路については「オリゴ糖」の記載を参照されたい。
3. 機能性
ガラクトオリゴ糖は、腸内のビフィズス菌の増殖促進作用だけでなく、排便回数の増加や便性改善作用、腸内腐敗産物の産生を抑制する作用等を示すことが知られている。こうした背景から、一定の規格を満たすものは、消費者庁より規格基準型特定保健用食品としての認証が与えられている。また、その他にもミネラルの吸収促進作用、難う蝕作用を示すことも知られている。さらに、脂質代謝の改善や免疫機能にも影響を与えることを示唆する報告もあり、今後、新たな有用性が見出されることが期待される。
(佐藤 直)