公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

当センターについて


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財団の歩み

財団法人 日本ビフィズス菌センターの歩み
設立25周年を記念して

  • 財団法人 日本ビフィズス菌センター顧問
  • 中谷 林太郎
  • (元財団理事長、東京医科歯科大学名誉教授)

1.はじめに

財団法人日本ビフィズス菌センター(以下JBFと略)の発足は1981年4月1日で、今年は設立25周年の記念の年にあたります。この節目の年にあたり、当財団について読者のご理解とご協力に資するため、これまで当財団が歩んできた経過を振り返り、今後の発展を期する意味で本稿をまとめてみました。
当財団の業務は多岐にわたり、またかなりの変革を経て現在にいたっていますので、各業務についてなるべく要点をしぼって紹介することにします。なお、詳細については当財団の総務主幹川島拓司の執筆稿(1)にゆずることとします。

(1) 川島拓司.2006、財団法人日本ビフィズス菌センター設立25周年を迎えるにあたって「その設立の経緯と事業理念」.腸内細菌学雑誌20(2):97-105.
(2) 川島拓司.2006年1月30日、財団法人日本ビフィズス菌センター設立準備からの歩み.(財団事務局保管).

2.設立の経緯(1971-1980)

当財団の設立母体は「ビフィズス菌腸内増殖に関する研究会」で、本間道教授[故人、JBF初代理事長(医学・小児科学)]以下4名の世話人[田村善蔵(薬学・分析化学)、中谷林太郎(医学・細菌学)、光岡知足(農学・獣医学)]と第一製薬株式会社ほか5社の幹事企業により運営された。原則として年1~2回、おもに経団連会館の一室において開催され、第1回1971年11月17日から2001年まで継続し通算56回に達した。各世話人の研究室におけるビフィズス菌およびそれに関連した研究が話題として提供された。学会とはやや異なり、かならずしも完結されたものに限らず、進行途上の研究課題についても討議の資料として提供され、忌憚のない意見交換が行われた。参加者は世話人関連の研究者と幹事企業の担当者からなる約20名~30名であった。
この研究会はJBF発足後も財団から助成金を受けて数年間継続されたが、やがてJBFの学術集会である腸内細菌学会に吸収されることとなった。ともあれ、JBFはこの研究会を母体として生まれた。財団の運営や学術集会の理念・雰囲気などはこの研究会のそれを現在も脈々として受け継がれているように思われる。

3.設立準備会議(1978~1981)

前記研究会の世話人4名、および支援企業の数社からの幹事が中心となり、この研究会を前身として、新たに学術団体の許可を得るための設立準備会が1978年8月から81年3月までの2年半の間に15回開催された。
準備会では設立趣意書や寄付行為などを作製するとともに、賛同企業から拠出金を募り資産を整えた。そしてついに当時の文部省から財団法人日本ビフィズス菌センターの設立が許可された。時は1981年4月1日であった。
この間文部省を訪問し、説明、指導を受けること10度あまり、本間初代理事長の揺るぎない信念と根性および企業幹事の活動によってついに設立に漕ぎ着けることが出来た次第である。財団の名称も、日本ビフィズス学会、日本ビフィズス協会、日本ビフィズス・菌叢学財団、日本ビフィズス財団などの案を経て、最終的には「日本ビフィズス菌センター」とすることが文部省内予備審査で修正されこれに決定された次第である。

4.財団の基本理念

財団の基本理念はその設立趣意書に表されているが、その要点となる項目を列記すると次のとおりである。(1)「内なる環境の整備を」、すなわち人類の生存に関わる外的環境の整備が重要なことは勿論であるが、人体の内なる環境を構成する腸内菌叢の整備を忘れてはならない:(2) 腸内菌叢を中心とする内なる環境に関する研究は学際的研究としてもまたライフサイエンスの一環としても極めて重要な研究課題である:(3) ここに焦点を合わせた学際的な学問の推進活動を世界に先駆けて行う:(4) 腸内菌叢と宿主とのかかわり合いに関する先駆的、独創的研究の開発と推進:(5) 以上を遂行するに資するための事業(情報の収集と提供:学術集会の開催:機関誌発行)。なお、広い意味で宿主と寄生体との関係を代表するものとして「ビフィズス菌」が財団の名称の一部に加えられた。また、趣意書には明記されていないが、当財団では産学協同で事業を進めるという考え方が設立準備段階から今日まで一貫して受け継がれている。

5.財政基盤

設立趣意書および寄付行為に基づく準備会議の呼びかけに賛同された企業26社からの拠出金7,000万円(基本財産6,000万円、運用財産1,000万円)が当初の資産として積み立てられ、財団設立が許可された。
基本財産と運用財産を拠出された企業13社、基本財産のみが7社、運用財産のみを拠出された企業6社の計26社であった。
これら企業の内訳は、牛乳・乳製品関係企業、製薬企業が主で、その他が2~3社である。その後の25年間には退会や新規加入などの変遷を経て現在にいたっているが、当財団の運営には多数の企業からの浄財の恩恵に与っていることを忘れてはならない。

6.設立式典

この財団の発会式は1981年5月9日、湯島会館で行われた。式典の詳細は資料(1)(2)にゆずるが、本間理事長挨拶を皮切りに、多数の来賓の方々から祝辞を戴いた。すなわち、石橋長英日本国際医学協会会長、武見太郎日本医師会会長、熊谷洋日本医学会会長、緒方富雄東大名誉教授(肩書は当時のもの)の錚々たる諸先生からの祝辞であった。

7.JBFの組織

資料(2)に組織図(平成17年5月25日現在)が示されているが、その概要は次のとおりである。

  1. 財団維持基盤:法的根拠(基本財産、寄付行為)、会員(名誉会員、賛助会員、個人会員、団体会員)
  2. 業務執行担当:理事長(事務局)、常務理事会:総務局、企画委員会、情報・広報委員会、編集委員会、学術委員会、JBF研究奨励賞選考委員会。
    この組織はその時々の必要性に対応して、改変、追加などが行われて今日にいたっている。
    JBF設立以来の理事長:本間道、中谷林太郎、光岡知足、上野川修一
    初代総務局長:田村善蔵、なお井上直之、川島拓司の両氏は財団設立以来の総務幹事
  3. 事業計画・収支予算の審議、業務執行結果の評価・監査:理事会及び評議員会は、ともにその約半数ずつが学界あるいは支持企業に所属するメンバーで構成され、事業活動の方針とその成果の審議を行っている。

8.機関誌の発行、出版、情報・広報事業

1)機関誌の発行

(1) 和文機関誌
財団発足当初は“BIFIDUS FLORES ET FRUCTUS(BFF)”(緒方富雄先生の命名による)が年4冊(1981年~1986年)発行された。これはその後和文機関誌“ビフィズス Bifidus Flores et Semina”に引き継がれ年2冊(1987年~1997年)発行、1997年には“腸内細菌学雑誌”と改称され年2~4冊発行、2006年現在第20巻を数えるにいたっている。

(2) 英文機関誌
“Bifidobacteria and Microflora (BM)”として発刊された英文機関誌は、学術集会での講演内容を編集したプロシーディング的な論文集で、1982年~1986年には年1冊、1987年~1995年には年2冊ずつ発行されていた。次第に投稿論文が増える傾向がみられるようになったので、名称を”Bioscience and Microflora (BM)” に改めるとともに、海外の編集委員も加えて充実した。1996年~2001年には年2冊、2002年からは年4冊発行されている。これは1997年から学術集会の名称を“腸内細菌学会”としたこと、および和文機関誌を“腸内細菌学会誌”と変更したことと連動している。BM誌は2006年現在第25巻を数える。
機関誌の発行は、和文誌、英文誌に学会抄録号を加えると2005年までは年7冊、2006年からは年8冊となる。

2)出版

“ビフィズス菌の研究”光岡知足編(1994年7月1日発刊)はそれまでの研究の集大成が纏められたもので好評を博した。完成が奇しくも本間理事長の告別式に間に合い、当日祭壇に捧げられた。
2006年には4冊の単行本の刊行が予定されている。

3)情報・広報事業

当財団のホームページは1997年に立ち上げられた。掲載内容は定期的に見直され更新されている。(URL:http://bifidus-fund.jp/)
また、和文機関誌・英文機関誌には種々の情報が掲載され、会員その他への広報活動を行ってきている。

9.学術集会・腸内細菌学会・国際会議

1)JBF学術集会[1981年~96年(第1回~第16回)]

1981年の財団設立以降年に1回開催されてきた。開催期間は1日間で、毎回主題を決めてそれに沿った特別講演(会長講演が通例)、シンポジウムが企画された。また、一般演題も公募され新しい研究成果が口演またはポスターにより発表された。会長は理事、評議員などの中から選ばれ、委嘱された。産学協同の理念のもとに、学界のみならず企業を代表する研究者も会長に選任された。
会場は、当初数年間は東京医科歯科大学講堂が使用されたが、その後は適宜各所で開催された。

2)腸内細菌学会[1997年~(第1回~ )]

1997年の第17回学術集会から学術集会の名称は“腸内細菌学会”となりこれが第1回腸内細菌学会となった。1999年までは開催期間は1日間、 2000年以降は2日間(後記の研修会を吸収し、JBF研究奨励賞受賞講演などを含めた)となった。会場には、近年東京大学農学部弥生講堂(一条ホール)が使用されている。2006年の第10回腸内細菌学会(通算26回)は、財団設立25周年記念大会として檀原宏文会長のもと北里大学薬学部(薬学部コンベンションホール)で開催される。

3)国際会議

これまで2回にわたって国際会議が開催された。最初は1990年9月12・13日に財団発足10年を祝って、田村善蔵会長のもと第10回学術集会が“International Bifidobacterium Conference (IBiC’90)”として内外の関係者の参加を得て盛大に催された。会場は経団連会館が使用された。
次は2001年7月5・6日、光岡知足会長のもと、同じく経団連会館において、第5回腸内細菌学会が“International Conference of Intestinal Bacteriology (iCIB2001)”として財団設立20周年の記念事業として開催された。多くの内外の学者を招いて意義深い学術交流が行われた。いずれの会議においても一般演題はポスターセッションで発表された。
以上の国際会議は当財団が設立以来指向してきた理念を国際的に実現する機会となったと考えられる。なお、これら会議は支持企業その他から特別な協賛を得て実施されたことを付記しておきたい。

10.研修会の開催

「内なる環境の整備」に関連するテーマを、会員の希望やその時々の社会的話題なども考慮にいれ、年1回(1日間)開催された。1985年~1999年の間に15回開催されたが、学術集会が腸内細菌学会に移行したのを機に、現在は中断している。
この会の呼称を“講習会”とせず“研修会”としたのは、講義を受動的に受けるだけでなく、受講者も積極的に参加すべきである(田村善蔵理事の提言)という意味がこめられていた。
初期にはビフィズス菌や腸内菌に関する基礎や利用など啓蒙的テーマが取り上げられた。以後は高齢化、免疫、アレルギー、動脈硬化、生活習慣病、糖尿病、病原性大腸菌O157などを主題として講義・質疑応答が行われた。毎回、3名~4名の著名な講師を招聘し、高いレベルの内容であった。受講者は各回30名~60名であった。

11.顕彰・表彰・研究助成

1)顕彰

学術集会における特別講演者あるいは財団活動貢献者等にはビフィズス杯あるいはTissier Medal が贈呈され、その功績が表彰されてきた。
Tissier Medal はビフィズス菌発見者であるHenri Tissier 博士の肖像を復刻したものである。初代理事長本間道教授のTissier博士に対する特別な思い入れから、Tissier博士の友人であり彫刻家でもあったメダルの製作者Henri Bouchardの子息Francois Bouchard博士の快諾を得て復刻されることとなった。1987年末にメダルが完成し1998年から学術集会における特別講演者に贈呈されるようになった。

2)表彰

JBF奨励賞が1999年に創設され、対象者の募集が開始された。本賞は腸内細菌学の分野において、学術上または産業上の発展を期待し得る優秀な研究業績をあげた若手研究者に対し授与する制度である。第1回(1999年度)の授与は2000年6月8・9日開催の第4回腸内細菌学会において行われ、2名が表彰され、受賞講演を行った。以後毎年実施され、2004年度までに毎回2名ずつ計12名の受賞者に授与されている。

3)研究助成

「ビフィズス菌の腸内増殖に関する研究会」に対する助成が行われた。1981年~1998年は年2回、1999年~2001年は年1回ずつ開催されていた。

12.ビフィズズ菌株の保存・分与

委託方式で標準ビフィズス菌5株を保存し、希望者に分与してきたが(1981年~1999年)、以後休止している。

13.JBFの所在地および事務所

  • 1981年~2004年
    設立発足時:東京都文京区弥生2丁目4番16号、
    移転後:東京都文京区本駒込5丁目16番9号(財)日本学会事務センター
  • 2004年~現在
    東京都豊島区巣鴨1丁目24番12号

14.おわりに

財団法人日本ビフィズス菌センター設立の母体となったビフィズス菌腸内増殖に関する研究会が発足してから35年、財団設立から25年が経過しました。このあたりで、これからの発展への一里塚となるであろうことを期待して、これまで歩んできた足跡を概観した次第です。
“星霜移り人は去り行く”のは世の常であり、当財団もその例外ではありません。数年来、新しく就任された財団役員の活動によって、出発いらい高く掲げられてきた理念は次第に現実化されつつあります。また、一般会員は数の増加だけでなく、活発な活力によって財団の発展に寄与されています。支持企業の変わらぬご理解と協賛も財団活動に欠くことの出来ない力となっています。
昔、私どもが若かりし頃、「腸内菌叢の研究は泥沼に足を踏み込むようなものだ。年寄りのやる研究だ。」などと言われたことを思い出します。また、私自身もかつては、フローラ研究にはpseudoscienceの臭いがするような感じを抱いていたことは否定できません。しかしながら、ここ数十年来の腸内菌叢、ビフィズス菌、プロバイオティクス、プレバイオティクスをめぐる研究や関連製品に対する科学的裏付けの進歩は目覚ましいものがあります。
腸内菌叢の研究は、感染症や免疫の研究と相互に作用しつつますます重要性を増してきているように考えられます。これらの科学の進歩とともに本財団がたゆまぬ発展を続けることを希求する次第です。読者各位の一層のご理解とご支援をお願いして止みません。

2006年5月