ビフィズス菌はヒトを始めとして動物の腸管内に広く、且つ優位に分布する微生物であり、宿主に対して有益な菌であるといわれながら、今日までその意義は必ずしも解明されていない。わが国における医学、薬学、農学の研究者よりなるビフィズス菌研究グループの20有余年にわたる研究結果からみてもビフィズス菌はヒトにおいても動物においても、さらに深く研究さるべき対象であることが明らかである。
そもそも、地球上における生体と微生物との関係は、学際的研究分野から、且つまたライフサイエンスの一環として、極めて重要な研究課題であり、とくに近年、人類の生存に関わる環境因子が対象としてとり上げられつつあるとき、内なる環境としての腸内菌叢を忘れてはならない。そして、広い意味で宿主と寄生体との関係を代表するものは、ビフィズス菌である。ここに焦点を合わせた学際的な学問の推進活動は世界にまだその存在をみない。
一方、今日、研究の分化と高度化に伴い、学術情報量が急激に増大してきており、この収集、整理は、個々の研究者の力の及ぶ範囲をはるかに凌駕するとともに、オンライン情報システムの開発はめざましく、資金の助けをかりれば膨大な世界の科学情報を瞬時に入手することも可能になりつつある。このため、優れた学術研究の展開を図っていくためには、最新の情報収集機構を利用して、世界の研究成果を収集、整理し、精選された情報として広く研究者に提供することが肝要なこととなっている。この様な状況にかんがみ、本センターは、ビフィズス菌を中心とした腸内菌叢と宿主とのかかわりあいに関する先駆的、独創的な研究開発の推進に資するため、当該領域に関するあらゆる情報資料の収集、提供並びに学術集会の開催及び機関誌の発行等を行い、斯学の研究の進歩、普及を図り、もって我が国における学術の発展並びに人類の福祉に貢献しようとするものである。
昭和56年2月10日
財団法人 日本ビフィズス菌センター設立発起人