公益財団法人 腸内細菌学会/腸内細菌学会 Japan Bifidus Foundation(JBF)/Intestinal Microbiology

腸内細菌学会


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第13回腸内細菌学会

終了いたしました。多数のご参加ありがとうございました。

第13回腸内細菌学会を終えて(大会長挨拶)

第13回腸内細菌学会は、腸内細菌と消化管機能との関連に焦点を当て「腸内フローラと消化管「第二の脳」の機能研究の新展開」をメインテーマに、2009年6月11、12日の2日間、北里大学薬学部コンベンションホール(東京・白金)において開催されました。懸念された新型インフルエンザの流行も大事には至らず、多くの参加者(約430名)により盛会の内に終了しました。

第1日目は雨の中、早朝より一般演題の発表が行われました。今回は22題と多くの発表があり、タイトなスケジュールで休憩時間も短く参加者の皆様にはご迷惑をかけました。発表内容は腸内フローラ解析法、ビフィズス菌の遺伝子、腸内代謝解析・制御法、生体への効果(感染症、免疫・アレルギー、IBS・ストレス)についての幅広い研究成果が発表され、各演題とも活発な質疑応答がされました。続いて、若手研究者に対する日本ビフィズス菌センター研究奨励賞授賞式が行われ、今年も2件の優秀な研究に対する授賞と受賞講演が行われました。最後にA. Neish先生による特別講演が行われ、腸内常在菌が腸管上皮細胞による弱い活性酸素種の生成を引き起こし、それが消化管機能の恒常性に寄与するという興味ある話しとその分子メカニズムの最新の知見の紹介がありました。その後に行われた懇親会も多くの参加者で会場は窮屈なくらいで、熱心な議論や情報交換が遅くまで続きました。

第2日目の最初は藤田恒夫先生による「腸は考える-回想と展望」と題した特別講演が行われました。消化管の内容物に対する内分泌応答などに関与するセンサー細胞の発見の経緯・意義・今後の展望について、エピソードを交えて活き活きとしたお話しを聴けたのは感銘深いものでした。先生のお話は、続いて行われた2題のシンポジウムのキーノートともなるお話でした。シンポジウム1は「腸内フローラ研究を見据えた腸管機能研究の新たな展開」と題して4人の先生のお話を聴きました。それぞれ腸内細菌と接する消化管の構造・機能についての最新知見の話しがありました。現状では腸内細菌との関連についての直接的な知見はあまり多くはないけれど、今後の発展に大きな期待の持てる内容でした。最後のシンポジウム2は「腸内フローラは神経機能にどの様に影響するか?」と題して4人の先生のお話を聴きました。消化管運動への影響や、更に全身の自律神経系、ストレス、睡眠などへの影響など今後に広がる研究の方向性を示唆する内容でした。

今回は、現状では腸内細菌との関連についての知見が必ずしも多くない内容をメインテーマとして採り上げました。「今後はこういう研究が必要ではないか?」、「こういう研究が広がるはずだ」という思いで企画しましたが、皆様に関心を持って聴きに来て貰えるのか不安もありました。結果的には多くの方々に参加頂き、ホッとしております。これを契機にこの分野の研究が進展することになれば、望外の喜びです。最後になりましたが、会場をご提供頂きました北里大学および本会を開催するに当たりご協賛を頂きました企業・団体の方々に心より感謝申し上げます。

高野俊明
カルピス(株)健康・機能性食品開発研究所 顧問


日時 平成21年6月11日(木)・12日(金)
会場 北里大学 薬学部「コンベンションホール」
東京都港区白金5-9-1
会長 高野俊明(カルピス(株))
事前参加費
  • 会員:6,000円
  • 一般:7,000円
  • 学生:2,000円

PDF 事前参加受付についてのお知らせ(※PDFファイルを開きます)

当日参加費
  • 会員:8,000円
  • 一般:9,000円
  • 学生:2,000円
  • (予稿集会員無料配布、当日別売 1,000円)
  • (懇親会費 2,000円)

PDF プログラム(※PDFファイルを開きます)

お問い合わせ 公益財団法人 日本ビフィズス菌センター事務局
〒170-0002 東京都豊島区巣鴨1-24-12
TEL:03-5319-2669 FAX:03-5978-4068
e-mail:jbf(at)ipec-pub.co.jp ※メール送信時は(at)を@に変えてお送りください。

学会スケジュール(予定)

第1日 6月11日(木)

8:50 ~ 9:00 開会の挨拶
9:00 ~ 15:40 一般演題発表(11:55 ~ 12:45 休憩)
15:55 ~ 16:00 日本ビフィズス菌センター研究奨励賞授賞式
17:00 ~ 17:50 特別講演1
Andrew Neish (Emory University School of Medicine)
「Molecular Analysis of Commensal Microbial-Host Cross-Talk in the Intestine」
18:00 ~ 19:30 懇親会

第2日 6月12日(金)

9:30 ~ 10:20

特別講演2
藤田恒夫(新潟大学名誉教授)
「腸は考える ― 回想と展望」

1970年ごろから私たちは、腸上皮に分布する基底果粒細胞が内腔の多様な刺激を受容する多型なセンサー細胞であることを、電顕と免疫組織で明らかにしてきた。この細胞型の一つであるEC細胞は迷走神経求心枝と連接し、細菌毒素の刺激を受けると脳に嘔吐の命令を発する。腸内フローラと各型のセンサー細胞の関係は、今後の研究課題であろう。
10:30 ~ 12:30

シンポジウム1『腸内フローラ研究を見据えた腸管機能研究の新たな展開』

  1. 桑原厚和(静岡県立大学大学院環境科学研究所)
    「消化管短鎖脂肪酸受容体の発現様式とその生理作用」

    大腸には多数の常在細菌が存在しており、消化管にひとつの生態系を構築している。最近の研究から、これら常在細菌と消化管との相互作用が消化管の機能を維持するのに重要であることが明らかになりつつある。本講演では、常在細菌により産生される短鎖脂肪酸受容に重要な短鎖脂肪酸受容体の働きとそれを介した大腸生理機能の制御について我々の最近の研究成果をご紹介したいと思います。
  2. 鳥居邦夫(味の素(株)ライフサイエンス研究所)
    「消化管におけるグルタミン酸シグナルの役割」

    消化器を支配する迷走神経の求心性線維は胃枝、小腸枝、肝枝すべてがグルタミン酸(Glu)に応答する。後二者はアミノ酸、糖、食塩など消化吸収する栄養素に対し、興奮性や抑制性の応答性を示すが、胃枝はうま味物質であるGluにのみ応答し、脳での食物摂取の認知と消化開始の指令を発する重要な手がかりと考えられる。胃のGluシグナルの脳への入力先は視床下部の基礎代謝、体温調節とともに摂食行動に関わる部位であり、過食/肥満を抑制している可能性が示された。
  3. 鳥橋茂子(名古屋大学医学部)
    「消化管平滑筋層とカハールの介在細胞の発生」

    消化管の筋層に分布し、ペースメーカー機能や神経伝達の促進機能を持つカハールの介在細胞(ICC)は癌源遺伝子c-kitを発現し、多くはc-KITレセプター依存性に発生することは良く知られている。しかし、胎生期ICCが分化する前には平滑筋層でもc-kitの発現が見られる。従って平滑筋とICCの発生には密接な関係がある。
  4. 清水誠(東京大学大学院農学生命科学研究科)
    「培養細胞を用いた in vitro実験から見えてくる機能」

    ヒト由来Caco-2細胞をはじめ、各種腸管上皮細胞を用いたin vitro実験系が、腸内細菌の上皮接着性や腸内細菌に対する細胞応答の研究に利用されている。生体(個体)の応答性をin vitro実験系で再現することは困難であるが、生体で起こる反応の一部を分子レベル、細胞レベルで詳細に検討するうえでin vitro実験系は欠かせない。in vitro実験系の限界と可能性について考えてみたい。
12:30 ~ 14:00 休憩
14:00 ~ 16:00

シンポジウム2『腸内フローラは神経機能にどの様に影響するか?』

  1. 藤宮峯子(札幌医科大学医学部)
    「セロトニンと消化管機能」

    セロトニンを含有するEnterochromaffin(EC)細胞は、胃から大腸まで広範に分布する。本講演では、セロトニンの分泌刺激と、分泌の方向性、また、消化管運動や、エンドトキシントランスロケーションに与える影響に関して述べさせていただきます。
  2. 永井克也(大阪大学名誉教授)
    「乳酸菌の腸内投与による自律神経活動と生理機能の変化」

    筆者らは乳酸菌の腸内投与がウレタン麻酔ラットの副腎、腎臓、白色脂肪組織、褐色脂肪組織などを支配する交感神経活動や胃や肝臓を支配する副交感神経活動に影響を与え、ラットの血圧、血糖、体温、血中遊離脂肪酸濃度、摂食、体重などを変化させ、これらの変化が体内時計の主時計の存在する脳・視床下部・視交叉上核やヒスタミンニューロンの関与により生じる、などを示す結果を得た。本講演ではその詳細を述べたい。
  3. 須藤信行(九州大学大学院医学研究院)
    「ストレスと腸内フローラ」

    われわれのグループは、無菌(germ free: GF)マウスおよび人工菌叢マウスを用いて、GFマウスでは通常のSPFマウスと比較し拘束ストレス負荷による血中のACTH、コルチコステロンの上昇反応が増強していること、またこのHPA axisの過大反応はGFマウスをSPF化することで減弱することを報告してきた。
    従来のストレスと腸内フローラに関する研究は、主として、ストレスが腸内フローラの構成にどのように影響しているかという方向(ストレス→腸内フローラ)からアプローチされてきたが、この研究結果は、腸内フローラが成長後のストレス応答の形成に関与する神経系に影響しうる(腸内フローラ→ストレス)可能性を示唆している。
  4. 小野茂之(花王(株)ケアビューティ研究所)
    「腸内フローラと睡眠:便通状態と睡眠健康の関係を中心に」

    昨今の高ストレス社会に伴い、不眠が大きな社会問題の一つとなってきている。時計遺伝子の研究をはじめ、近年の睡眠研究の発展はめざましい。しかしながら、睡眠は、多くの環境要因に影響されており、睡眠健康の改善・促進という観点からは十分に解明されているとはいい難い。そこで、消化管運動と睡眠健康の関係を検討し、機能性便秘等の便通状態が、腸内環境を介し睡眠健康に影響する環境要因である可能性が示唆されてきた。
16:00 ~ 16:10 閉会の辞

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